訳あり冷徹社長はただの優男でした
何だか今日はパパっ子のすずが、やたらと柴原さんにまとわりついている。歯磨きもパパにやってもらうと譲らない。

「すずねぇ、きょうはねぇ、パパといっしょにねゆの。」

「パパと寝るの?」

「うん!」

やれやれといった感じの柴原さんは、すずと手を繋いで柴原さんの自室へ入っていく。

「ねえねにおやすみは?」

「ねえね、おやちゅみー。たーっち!」

すずは私とハイタッチすると、テンション高く部屋の奥へ消えた。

ポツンとリビングに残された私はしばらく呆然としてしまう。
思わぬ自分の時間ができた。だけどいざ時間ができると、何をやっていいかわからない。

あれれ?
普段私は何をしていたっけ?

すずとの生活にすっかり慣れてしまって、自由な時間が手持ち無沙汰になってしまった。
試しにテレビを見てみるも、特に面白い番組はやっていない。

私はやたら大きくてふかふかなソファに体を沈めた。
柴原さんちのリビングは一人では広すぎる。
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