訳あり冷徹社長はただの優男でした
「育児時短勤務だと課長が仕事量を配慮してくれて、出張とか会議とか出なくてよくなるから楽よ。」

「でも武藤さん、たまに出張行ってますよね?」

「あれは、直行直帰の日帰りの出張よ。さすがに泊まりはないな。」

「なるほど、参考になります。」

私はさっそくパソコンで育児時短勤務の申請画面を開いた。

もし申請が通ったとしたら、時間に融通の利く私がすずの送り迎えをすることになるだろう。でも時短ということはその分お給料も減ってしまう。それでいいのだろうか。その分柴原さんが稼いでくれたらいい?

いやいやいやいや!

そこまで考えて私は頭をブンブンと横に振る。
私と柴原さんはルームシェアをしているだけであって、家族ではない。あくまでもすずを育てるという協力者にすぎない。何かを期待してはいけない。

それに出張や会議がなくなってしまったら、今度こそ私のキャリアウーマンとしてのキャリアが地に落ちるではないか。

幾ばくかの葛藤の末、私はため息ひとつ、育児時短勤務の上程ボタンをクリックした。
後悔はしていない。
たぶん。
そう思いたい。
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