訳あり冷徹社長はただの優男でした
***

休みの日。
今日は柴原さんも珍しく暇そうにしている。

私たちは初め朝昼晩の食事は別々だった。
生活リズムが違うところはそれでよかったが、一緒にいるときにも別々で食べるのはすずの教育上よろしくないと、途中で話し合って路線変更をした。それに、効率と節約を求める私は、食費や光熱費を無駄に使いたくない。いくら柴原さんが全部支払ってくれているとしてもだ。
なので食事も私が三人分作ることにした。

「柴原さん、お昼ご飯どうします?」

そろそろ何か作ろうかと重い腰を上げると、それを柴原さんが手で制す。

「たまには俺が作るよ。いつも美咲に助けてもらってるばかりだから。」

思いもよらない提案に、私は訝しげに聞く。

「料理、できるんです?」

「失礼な。これでも一人暮らしは長かったんだ。」

「えー?だって社長なんて毎食外食のイメージだし。」

正直に思ったことを言うと、柴原さんは楽しげに笑い出した。つられてすずも笑い出す。

「毎食外食にしたらさすがに飽きちゃうよ。まあ、俺が作る料理は美咲が作ってくれるご飯よりは味は落ちると思うけど。」

さらりと言われたけど、それは私のご飯が美味しいと受け取ってもいいのだろうか。
都合よく考えてしまった思考に、私はすぐさま打ち消すように愛想笑いをした。
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