訳あり冷徹社長はただの優男でした
昼食が終わると、すぐさますずが遊び出す。本当は昼寝をしてほしいが、なかなか寝ようとはしない。

「パパえほんよんでー。」

本棚からお気に入りの絵本を持ってくると、すずは柴原さんの回りをぴょんぴょんする。
柴原さんはすずを抱えてソファに座らせると、自分も横に座って絵本を開いた。

昼下がり、親子仲良くくっついている姿を見ると微笑ましくなる。その光景を見ているだけで、私は幸せな気分になった。

私はそれを横目に、洗い物を始めた。
柴原さんがすずの相手、私は家事。
素晴らしい役割分担だ。

「ねえね、ねえねもすわってー。」

ちょうど洗い物が終わる頃、見計らったかのようにすずが私を呼んだ。

「ねえねはすずのよこね。すわってよーう。」

すずを真ん中に右が柴原さん、左が私。
その光景は、まるで本物の家族みたいに思えた。

柴原さんがすずに催促されて絵本の続きを読み出すが、それがなんとも下手くそで笑えてくる。でもとても安心する声だ。

気付けばすずがうとうとし始めていた。
柴原さんはそれに気づいているのかどうなのか、そのまま読み続ける。柴原さんの声はとても心地いい。聞いていると私まで眠たくなってくるようだ。

次に気付いたとき、すずは柴原さんの膝の上に頭をしなだれてすやすやと寝ていた。
と同時に色々と違和感がある。
だんだんと頭がはっきりしてくると、ようやく私は柴原さんにもたれ掛かって寝ていたことに気付いた。そして今、私の頭の上には柴原さんの頭があるような?

こ、これはっ!
どどどどどどどうしようっ!
でも今動くとすずが起きちゃうかもしれない。

ドキドキがどんどん大きくなっていき止まらない。柴原さんの温もりが感じられて胸がぎゅっとなった。頭の上からはかすかに柴原さんの寝息が聞こえる。三人でくっついて寝てしまったことに今更ながら驚いたが、でももう少しこのままでもいいかと思えた。
< 72 / 112 >

この作品をシェア

pagetop