ごめん。ぜんぶ、恋だった。
「勢いだったとはいえ、私の勝手な都合で速水くんを巻き込んで、本当に本当にごめんなさい」
速水くんにはお兄ちゃんと言い合いをした際に、つい言ってしまったと説明してある。
大声を出したのは本当だけど、ありもしないことを口走ってしまった原因は他にある。
――『お前、俺のこと意識してる?』
腕を掴まれた時、ひどく私は動揺した。
とっさにバレてはいけないと思った。
だから逃げるために、速水くんの名前を出してしまった。
「勢いで言ったってことは、とっさに俺のことを思い浮かべてくれたってことでしょ。それは普通に嬉しいよ」
「で、でも速水くんにも好きな人がいるかもしれないのに……」
「好きな人……。まあ、気になる人はいるけど」
「そ、そうだよね。私って本当にもう……」
自分勝手すぎて言葉にならない。
「でも付き合ってることにしてもいいよ。理由はわかんないけど、仁菜子ちゃんの気持ちが落ち着くまでそういうことにしておこうよ」
「……速水くん」
優しすぎて泣きそうになってくる。
悪いからお兄ちゃんに本当のことを話すと言っても、速水くんは気にしないでいいよと言ってくれた。