ごめん。ぜんぶ、恋だった。
そして放課後の委員会が終わり、時刻は5時半になろうとしていた。
図書日誌を竹下先生に渡したあと昇降口まで急ぐと、一年生の下駄箱の前に志乃ちゃんの姿があった。
「お疲れさま。もしかして走ってきた?」
「ちょっとだけね」
「私が誘ったんだし、ゆっくりでよかったのに」
校舎を出ると、空はすっかり薄暗くなっていた。
「なんか仁菜子ちゃんとこうして帰るのって久しぶりだよね」
友達関係に躓いて悩んでいた中学の時、志乃ちゃんは毎日私と一緒に帰ってくれた。
卒業したあとも、わざわざ校門まで迎えにきてくれたこともあった。本当にお姉ちゃんみたいで、一緒にいると安心する。
「今日もね、倉木の家に泊まるらしいよ」
志乃ちゃんが唐突にそんなことを言ってきた。
私はお兄ちゃんが家に帰ってこない理由はわからないけれど、志乃ちゃんはきっと知っているんだろうと思う。
「なんか倉木の家の近くにファミレスがあるらしいんだけど、今日はそこで晩ごはん食べるから来ればって言われてる。仁菜子ちゃんも来る?」
その言葉に、私は首を横に振った。