ごめん。ぜんぶ、恋だった。



お兄ちゃんには会いづらい。だって、どういう顔をしたらいいのかわからないから。

「柊は私になにも言ってこないよ。聞いてもべつにって流すだけ。だから仁菜子ちゃんになにがあったか聞いてもいい?」

「………」

そっか。お兄ちゃんはなにも話してないんだ。

どこから話せばいいんだろう。

むしろ私とお兄ちゃんはなにですれ違っているんだろうか。

私が避けて、次はお兄ちゃんが避けて。

出口のない場所をぐるぐるとさ迷っているような気分だ。


「……私、速水くんと付き合ってることになってるんだ」

「ふりってこと?」

「……うん」

「なんでそんなことしてるの?」

「それは……」

お兄ちゃんに対して変な気持ちが湧いてくるから、なんて志乃ちゃんには言えない。

だって志乃ちゃんはお兄ちゃんのことが好きだ。私がお兄ちゃんと出逢う前から一途にずっと。

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