ごめん。ぜんぶ、恋だった。
速水くんは用具室からバスケットボールを持ってきた。タンッタンッとボールをバウンドさせている手つきが、やっぱりバスケ部なだけあって慣れていると感じた。
「速水くんはいつからバスケをやってるの?」
「小学生の時からだよ。俺、小5の時にはもう170くらい身長があったからさ」
「えーすごいね!」
「でもけっこうコンプレックスだったよ。同級生たちと比べると浮いて見えるし、ランドセルも似合わないってからかわれてたから」
速水くんはそう言って、ドリブルしながらボールをゴールへと入れた。
ゴールネットが揺れている。あんな3メートルくらい高い位置にあるのに、速水くんは軽くジャンプしただけで簡単に届いてしまった。
「すごいね!プロみたい」
「はは、バスケ部の人なら誰でもできるよ」
「そうなの?でも私なんていくらジャンプしても、あんな高いところには絶対に触れないもん」
バスケットボールを魔法のように扱っている速水くんがカッコよかった。
「じゃあ、仁菜子ちゃんもボール入れてみる?」
「え?」
速水くんに手招きをされた私はゴール下へと移動する。なにをしようとしているのかわからないまま立っていると、ボールを渡された。
「ほら」
そして速水くんは私の背後に回り、そのまま身体を持ち上げられた。
「わっ……」
私の腰を掴んでいる速水くんの手の感触がはっきりと伝わってくる。