ごめん。ぜんぶ、恋だった。
「多分、仁菜子ちゃんも柊のことが好きだよ。まあ、それだけ気持ちをむき出しにされたら誰だって意識するけどね」
もしかしたら俺が知らないところで、志乃は仁菜からなにかを聞いているのかもしれない。
「でも、その好きは兄貴としてだよ」
俺は恋愛経験がない仁菜の弱いところに居座ろうとしている。
まるでつり橋理論のように、不安に感じたり、動揺したりすると、自分は相手のことが好きなんじゃないかと錯覚する。
俺はそうやって徐々に仁菜の気持ちを揺らしていた。
「私、思うんだけど、妹として好き、兄として好きって言葉にしちゃうと変な感じがするけど、それって家族愛だし、私がお母さんやお父さん、ララが好きなのと同じだから別におかしいことじゃないんだよね。仁菜子ちゃんだって、柊が黙っていれば家族愛だけで済んだんだよ。……家族としてじゃ、ダメなの?」
「………」
俺だって、普通にご飯を食べたり、買い物にいったり。たまにじゃれ合ったりしながら、穏やかに過ごせればそれで十分だった。
いつかあいつに好きな人ができて、シスコンだって言われようとどんなやつなのか自分の目で確かめて、もしいいやつだったら、幸せにしてもらえよって。
んで、泣かされたら俺に言えよって、そういう兄貴でいたかった。
「……後戻りできるはずだったんだよ」
どっかで目が覚めて、思春期特有の危うさだけの気持ちだけで終わるはずだった。
はずだったんだよ、俺だって。
でも思春期なんて、とっくに過ぎてんのに、全然終わらない。自分でもどうやって決着をつけたらいいのか、わからない。