ごめん。ぜんぶ、恋だった。
ゴンドラを降りる頃には、すっかり人もまばらになっていて、俺たちは電車に乗って最寄り駅に戻った。
「なんかお腹すいちゃったねー。晩ごはんなにかな?」
家へと続く道を仁菜と歩く。先ほど仁菜のスマホにメッセージが届いて、親父も仕事を早く終わらせて帰ってくるようだ。
「やっぱり遊園地のお土産は甘いものじゃないほうがよかったかな。でも試食したら美味しかったし、志乃ちゃんにも分けてあげようっと」
「仁菜」
「んー?」
振り向いた髪の毛がさらりと揺れる。
仁菜はもっと綺麗になっていくんだろう。
それでいつか俺のことなんて置いていくほど、先へ先へと進んでいく。
「好きな人として触るのは、これで最後だ」
そう言って、俺は仁菜のおでこに軽く唇を当てた。
これぐらい許されるだろう。
10年間の片想いの終止符は自分でつける。
まだ心は痛むけれど、仁菜が幸せならそれでいい。
「今日はありがとう。次は母さんと親父も誘って一緒に出掛けよう」
「うん、そうだね」
仁菜が潤んだ瞳で笑う。
そして俺たちは肩を並べて再び歩きはじめた――。