ごめん。ぜんぶ、恋だった。


黒いバンドと合わせるように文字盤もブラックになっていて、秒針と時間を表すインデックスは金色。さらに12時の部分には一粒のダイヤモンドがはめられている。

……可愛い。でも、これは絶対に高いやつだ。


「クリスマスプレゼント」

「え、わ、私に……?」

「他に誰がいんだよ」

柊は恥ずかしそうにそっぽを向く。

いつから用意してたんだろう。

一緒に買い物に行ったって男が入る場所じゃないって、いつもアクセサリーショップには寄り付かないのに。


「……っ、」

きっとぶっきらぼうな顔をして、なにがいいだろうって必死に選んでくれたはずだ。

そんな柊のことを想像したら涙がでてきた。


「なんで泣くんだよ」

「だって、柊は私のことなんて考えてないと思ってた、から……っ」

私は柊との今を考えたいのに、柊はいつもいつも私の欲しい言葉をくれなかった。


「ちゃんと考えてるよ」

「でも私は柊のお母さんでも家政婦でもないよ。私は柊にとってなんなの?」

聞き分けがよくて、お利口さんな自分が邪魔をして、ずっと聞きたくても聞けなかったことだ。

柊は困った顔はしなかった。

その代わり、返事はすぐに返ってきた。


「俺にとって志乃はいなきゃダメな人。んで、いないと俺がダメになる」

それを聞いた瞬間、今まで悩んでいたことが全部消えてしまった。

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