ごめん。ぜんぶ、恋だった。
2 ばらばら繁吹く









出逢った頃からお兄ちゃんはしっかりとしていた。

甘えん坊でメソメソしている私に『いい加減に泣き止めよ』と厳しく言いながらも、手だけは離さないでいてくれた。

だから、そんなお兄ちゃんに追いつこうと。

せめて肩を並べられるくらいにはなろうと心に決めていた。

だけど、最近のお兄ちゃんは私を見るたびに……。

なぜか切ない顔をする。


「橋本さん」

放課後。クラスメイトの速水くんが私の席へとやってきた。

「委員会、一緒に行こう」

今日は初めての活動日。仕事内容はきちんと覚えてきたけど、やっぱり少し緊張する。


「そういえば橋本さんって部活入ってる?」

「ううん。私、帰宅部。速水くんは?」

「俺はバスケ部。でも人数が多いから一年のうちは試合すら出られないと思うけど」

図書室へと向かう廊下で、私たちは並んで歩いていた。速水くんは背が高くて足も長い。けれど彼は私の歩幅に合わせてくれていた。


「新しいバッシュが欲しくて、この前スポーツ用品店に見にいったんだけど値段が高くてさ」

「そ、そうなんだ」

見た目でサバサバしてるように思われるけれど、実はかなりの人見知りだ。

でも速水くんは比較的に話しやすい。偶然にも席は隣同士だし、いつも気さくに声をかけてくれる。

どうやら速水くんにも姉弟がいるそうで、歳の離れたお姉さんに小さい頃は着せ替え人形みたいにワンピースばかりを着せられていたという話もしてくれたことがある。


「あれって橋本先輩じゃない?」

速水くんはふと、窓の外に目を向けた。正門へと足並みを揃えている生徒の中に、お兄ちゃんと志乃ちゃんがいた。

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