ごめん。ぜんぶ、恋だった。
「え、えっと、貸出期間は一週間になります。返却の際は受付カウンターを通していただき、図書室が閉まっていた場合は廊下にある返却ポストを利用してください」
説明する言葉をようやく紙を見ずに言えるようになったのは一時間後のことだった。
なんとか並んでいた列の人たちを消化して、私は「ふう」と息をつく。
人が普段どんな本を読んでいるのか目にする機会は少ないけれど、こうしてカウンターにいると、それぞれの本の好みが分かるから面白い。
勉強の調べ物をするために本を借りていく人もいれば、授業では習わない芸術の本を借りていく人もいる。
はたまた本は借りずに、文学の資料を黙々と机に張り付いて読んでいる人もいた。
「大丈夫?疲れてない?」
そんな中で、速水くんが声をかけてくれた。
「うん。大丈夫」
初日ということで手惑うことは想定していたけれど、今日はずっと速水くんにリードしてもらっていた。
速水くんは初めてとは思えないほど対応もスムーズで、先ほども『読みたい本があるけど見つからない』という生徒にパソコンで探してあげていた。
「私、色々と役立たずでごめんね」
「そんなことないよ。徐々に覚えていけばいいんだから」
ニコリと笑ってくれた速水くんにホッとする。
帰りには図書日誌というものを書いた。まだ覚えなきゃいけないことはあるし大変だけど、それ以上に達成感もあった。
……不安もあったけど、勇気を出して委員会に入ってよかった。