ごめん。ぜんぶ、恋だった。
お兄ちゃんがなんでもしてくれた。
お兄ちゃんに付いていけば間違いないとさえ思っていた。
だから私は今もなにもできない。
やろうとしているけれど、結局、甘さという部分は抜けていない。
「じゃあ、俺こっちだから」
分かれ道で、速水くんが足を止めた。速水くんはずっと私に話を振ってくれて会話が途切れることはなかった。
「同じ帰り道だし、委員会の時はこうして一緒に帰ろうよ」
「え、わ、私とでいいの?」
「はは。橋本さん以外誰がいるの」
速水くんは笑うと八重歯が見えて可愛い。
お兄ちゃん以外の男の子とこうしてふたりきりで話すのも帰るのは初めてだったけれど、本当にあっという間の時間だった。
「あと、連絡先も教えて。委員会のことでやり取りすることも増えるだろうし」
「うん。そうだね」
スマホに登録された【速水くん】の文字。メッセージアプリのトップ画はバスケットボールだった。
「家まで気をつけて帰ってね」
「うん。速水くんも」
そう言って、お互いに手を振りながら別れた。