ごめん。ぜんぶ、恋だった。
「お前の好きなアイス買ってきたから呼びにきてやったんだろ。早くリビングに来ないと溶けるからな」
「え、冷凍庫に入れてないの?」
「うん」
「もう、すぐ行くから!」
私は体育の着替えと同じように、スカートの下にズボンを履く。ファスナーを下ろしてスカートを脱ぎ、上着に手をかけたところで、お兄ちゃんに視線を向けた。
「着替えられないから下に行っててよ」
こうしてる間にもアイスが溶けてしまうというのに。それでもお兄ちゃんは淡々と腕組みをして、私のことをじっと見ていた。
「図書委員って、こんなに帰りが遅いの?」
「えーまだ六時だし遅くはないでしょ」
「でも家の前の道、外灯少ないだろ」
「平気だよ。途中の道までは速水くんも一緒だから」
すると、お兄ちゃんの表情が変わった。最近、ふいに見せる寂しい顔だ。
「次は俺が待ってるよ。嫌なら志乃でもいいし」
「だから平気だって。だいたいお兄ちゃんは過保護すぎるの。私はお兄ちゃんがいなくたってもう大丈夫なんだから!」
昔の私じゃない。
委員会だって自分で決めて、速水くんという男友達もできた。
まだ順風満帆とはいえなくても、これからお兄ちゃんに心配されないように頑張るって決めて――。
「……そっか」
お兄ちゃんは小さく返事をした。
その顔はとても寂しそうだった。