ごめん。ぜんぶ、恋だった。



「怒ってねーよ。お前と違って朝が弱いだけだ」

私との会話を遮るようにお兄ちゃんは洗面所のレバーを下げる。

ジャアアという水の音に邪魔をされて、話はそこで終わってしまった。


「ふたりとも、早く朝ご飯食べちゃって」

ダイニングテーブルにはお母さんが用意してくれたパンが置かれていた。

「俺、朝飯いらない」

お兄ちゃんはそう言って、そそくさとリビングを出ていこうとしていた。


「え、柊?」

お母さんの呼びかけも無視して、バタンとドアが閉まる。


「仁菜子のこと置いて先に行くなんて珍しいわね。柊と喧嘩でもしてるの?」

「怒ってないらしいよ、アレで」

「どう見ても怒ってるじゃない」

「私に言われても知らない!」

お母さんに八つ当たりをしながら、パンを口いっぱいに詰め込んだ。

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