ごめん。ぜんぶ、恋だった。


午前授業が終わって昼休み。コンビニで買った昼食の袋を机に出そうとすると、「仁菜子ちゃん」と名前を呼ばれた。

教室のドアで、志乃ちゃんが私に向かって手を振っている。


「志乃ちゃん、どうしたの?」

「へへ。ビックリした?一緒にお昼ごはん食べようと思って」

そう言って志乃ちゃんは私と同じようにコンビニの袋を揺らして見せてきた。


歩くたびにいい匂いがする志乃ちゃんに付いていくように私は教室を出る。

一年生の階を歩く志乃ちゃんは大人っぽくて同級生たちの視線を釘付けにしていた。


「たまに虫がいるけど、人が来ないから快適だよ」

志乃ちゃんが足を止めたのは、体育館裏だった。少し高くなっている石段の砂ぼこりを志乃ちゃんが綺麗に払ってくれた。

「はい、どうぞ」

誘導されるようにして、私は腰を下ろす。

食堂や屋上はいつも三年生が占拠していると有名で、そういう場所に一年生は行きづらい。こうして体育館裏も怖いところなんじゃないかと想像していたけれど、アカマツが揺れる音が聞こえるほど、穏やかで静かな場所だった。


「仁菜子ちゃんのお昼はなに?」

「おにぎりとお菓子。志乃ちゃんは?」

「私はサラダだけ」

志乃ちゃんはドレッシングにも気をつけているようで、サラダにかけたのは低カロリーのものだった。

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