ごめん。ぜんぶ、恋だった。
妹こと、仁菜子は俺のふたつ下で高校一年生。同じ学校に通っていて、俺は昔から〝仁菜〟と呼んでいる。
仲はまあ、兄妹にしては良いほうだと思う。
ガサツな性格に加えて見た目もボーイッシュで、スカートなんて制服以外持ってないほど色気もないけど、最近は髪の毛を伸ばしているらしい。
と言っても母さんゆずりのくせっ毛だから、理想としてる艶やかなストレートには程遠い。
「っていうか、その顔どうしたの?」
ダイニングテーブルに向かい合わせで座っていると、仁菜が俺の頬を指さした。
「どうしたって、なにが?」
「なんか引っ掻かれた痕がついてるけど」
どうりでずっとヒリヒリしてるわけだ。魔女のように爪が長かったから、おそらく叩かれた時につけられたのだろう。
「あー猫、猫」
カレーライスを口に運びながら適当に答える。
「もしかして志乃ちゃん家のララ?いいなー。最近会ってないけど、私も久しぶりに抱っこしに行きたいなー」
まさか俺が女に叩かれたなんて知らない仁菜は、そのあともララの話をしていた。
仁菜は俺と正反対の性格をしていて、良い言い方をすれば素直だけど、悪く言えば騙されやすい。
だから俺が外でなにをしているかなんて、想像もしたことはないんだろうと思う。