ごめん。ぜんぶ、恋だった。


お兄ちゃんのことを一番理解しているのは志乃ちゃんだと思う。

私には全然お兄ちゃんがなにを考えているかわからないけど、志乃ちゃんはお兄ちゃんの心を感じ取れているような気がした。


「なんでふたりは付き合わないの?」

「……ゲホ、ゲホッ」

私の質問が唐突すぎたようで、志乃ちゃんは口に含んでいたお茶でむせていた。


「だ、大丈夫?」

「もう、やだ。急にビックリするよ」

「ごめんね。でもなんで付き合わないのかなって気になって」


ふたりは生まれた時からずっと一緒にいる。

家にあるお兄ちゃんの小さい頃のアルバムには必ず志乃ちゃんも一緒に写っているし、ふたりしか知らない時間をたくさん過ごしてきたはずだ。


「……それは柊が私のことを女として見てないからかな」

考えてみれば、志乃ちゃんとこういう話をしたのは初めてかもしれない。

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