ごめん。ぜんぶ、恋だった。



「志乃ちゃんはお兄ちゃんのこと好きだよね?」

「うん。幼稚園の時から柊に片想いしてる。でも全然気持ちに気づいてくれない。本当に鈍感すぎだよね」

私でさえ志乃ちゃんがお兄ちゃんに想いを寄せていることには気づいていた。

多分、志乃ちゃんは隠そうとしていない。

バレンタインだって毎年手作りチョコをあげているし、お兄ちゃんの誕生日プレゼントだって絶対に忘れない。

そんな志乃ちゃんの気持ちにまったく気づいていないお兄ちゃんは鈍感というより、恋愛自体に興味が薄いのかもしれない。


「私ね、小学校でも中学校でも将来の夢はお嫁さんって書いてるんだよ?」

「え、志乃ちゃんも?実は私も……」と、とっさに言ってしまい、気まずさで不自然に頬を掻いた。


「私も小学校の時に……〝お兄ちゃんのお嫁さんになりたい〟って書いたんだ。あ、でもそれは恋愛とかじゃなくて、ブラコンの延長っていうか……」

「仁菜子ちゃん、柊にべったりだったもんね」


きっと兄妹になったのがお兄ちゃんじゃなかったら、あそこまで懐いたりはしなかったと思う。

もっと怖かったり、冷たかったり、私を邪険にする人だったら、今の関係も変わっていた。


お兄ちゃんはなんだかんだ言いながらも、いつも優しい。

お兄ちゃんさえいれば、私の生活が成り立ってしまうほど、依存心もあるかもしれない。


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