ごめん。ぜんぶ、恋だった。
学校が終わって家に帰宅したあとは、お父さんの帰りに合わせて晩ごはんを食べた。
でも、お兄ちゃんと私のあいだに会話はなくて、相変わらず微妙な空気が漂っている。
――コンコン。
そして夜。私はお兄ちゃんの部屋のドアをノックした。
お兄ちゃん部屋は私の隣だ。壁が薄いので少しの物音でもよく響くけれど、今日はお兄ちゃんの部屋からはなにも聞こえない。
「お兄ちゃん、ちょっと話せる?」
ドア越しから声をかけたけれど、返事はなかった。
……もう、なんで私が無視されなきゃいけないの?
だんだんと腹が立ってきて、「入るからね!」と、許可もなくドアを開けた。
……ふわり。
網戸になっている窓から夜風が通り抜ける。白いカーテンがゆらゆらと揺れていて、壁に添うように置かれている勉強机の椅子にお兄ちゃんは座っていた。
足音をたてないようにそっと近づくと、お兄ちゃんからはスースーという寝息が漏れている。
呼びかけても返事がないわけだ。だって、こんなにも気持ち良さそうに眠っている。