ごめん。ぜんぶ、恋だった。
「旨いよ。お前が捏ねたの?」
「捏ねただけじゃなくて、焼いたのも、味付けも私がしたよ」
「やればできるじゃん」
「でしょ?」
仁菜は安心したように、やっと料理を口に運びはじめた。志乃に教えてもらいながらとはいえ、他の料理もなるべくひとりで作ったそうだ。
「その調子で日曜はひとりでやるんだろ」
「ひ、ひとりはまだちょっと」
そう返ってくるのはわかっていたので、俺も日曜日はちゃんと手伝うつもりでいる。そんな俺たちのやり取りを志乃は微笑ましく見ていた。
「やるといえば、仁菜子ちゃん委員会の仕事はどう?」
志乃の言葉に、ポテトサラダを食べていた俺の手が止まる。
「まだ慣れないけど、速水くんに教えてもらいながらなんとかやってるよ」
「速水くんって人に教えるの上手そうだもんね」
「うん、そうだよ!クラスでもよく頼りにされてる」
「あの顔だから、けっこうモテるんじゃない?」
「本人はあんまり自覚してないみたいだけど、女子たちからは人気があるよ。他のクラスの人たちもわざわざ見にきたりするくらいだし」
仁菜と志乃は速水の話題で盛り上がっていた。