ごめん。ぜんぶ、恋だった。
 

そして週末。今日は待ちに待ったお父さんの誕生日。

本当は部屋中を飾り付けるつもりだったけれど、さすがに50歳の誕生日にハートの風船はないだろうとお兄ちゃんに却下された。


「お父さん、どう?」

お兄ちゃんと練習した甲斐(かい)もあってハンバーグと唐揚げとポテトサラダは失敗しないで作ることができた。


「うん。旨いよ!」

お父さんは頬張るように食べてくれていた。ホッと胸を撫で下ろすと、お兄ちゃんが隠していたケーキを出してきた。

ホールにするか最後まで迷ったらしいけど、それぞれの好みに合わせたものを買ってきたようだ。


「親父から選んでいいよ」

お兄ちゃんはそう言って、箱の中身をお父さんに見せる。メインのお父さんよりも先に箱を覗き込んだのは私だ。


「お父さんはこのビターチョコのケーキで、お母さんがモンブラン。で、お兄ちゃんはチーズケーキで、私はいちごタルトでしょ?」

甘い匂いに誘われて、次々とケーキを指さして言った。


「勝手に決めんなよ。親父の誕生日なんだから」

「でも絶対そうでしょ?」

「お前な……」

「はは、ふたりは誕生日になるといつもケーキで喧嘩になるよな」

お父さんの笑い声がリビングに響く。

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