ごめん。ぜんぶ、恋だった。
どれにしようかなと迷う素振りはしても、私が予想したとおりお父さんはビターチョコのケーキを選んでいた。
「私もケーキ食べようかな」
「お前のはないよ」
「もう、また喧嘩になるでしょう?」
次に会話に入ってきたのはお母さんだった。
お母さんはお父さんにカードケースをプレゼントしていて、そのタイミングでお兄ちゃんが花束を持ってきた。
「これ、志乃から」
それはお父さんの好きな青色を基調とした花束だった。
「おお、ありがたい!ちゃんと志乃ちゃんに礼を伝えておいてくれ。なかなか俺は時間が合わなくて会えないから」
「うん」
志乃ちゃんはうちの家族のことを本当に大切にしてくれているので、お母さんやお兄ちゃんや私の誕生日にも必ずなにかをプレゼントしてくれる。
けれど、こうして家族水入らずの日には誘っても参加することはなく、本当に気遣いがずば抜けていると思う。
「志乃ちゃんがお嫁さんに来てくれたら私も楽だわ」
「は?誰の嫁?」
「柊に決まってるじゃないの」
「相手くらい自分で決めるよ」
「え、ってことは誰かいい人でもいるの?今度家に連れてきなさいよ」
お母さんとお兄ちゃんの会話を聞きながら、私はいちごタルトを食べていた。