ごめん。ぜんぶ、恋だった。
夜も深くなると、お父さんは酔い潰れてしまった。
よほどみんなに祝ってもらったことが嬉しかったんだろう。東京オリンピックを鑑賞しながら飲むと言っていたワインまで開けてしまった。
「お父さん、こんなに嬉しい誕生会なら毎日でもいいって言ってたね」
お父さんを寝室へと運んだあと、私はお母さんとパーティーの後片付けをしていた。
「毎日誕生日だったら、あっという間におじいちゃんになっちゃうわよ」
「はは、たしかに」
事故で死んでしまった本当のお父さんのことはあまり覚えていない。
写真で見たことはあるし、お母さんから話は聞いているけれど、いつの間にか本当のお父さんより今のお父さんと過ごした時間のほうが長くなった。
「ねえ、仁菜子。最初は不安もあったけど四人家族になれて幸せだなって今日改めて思ったよ。これからも大切にしていこうね」
「うん」
私も今の幸せが長く続けばいいと思っている。