ごめん。ぜんぶ、恋だった。
お母さんも就寝した頃、ガタッと玄関から物音がした。まだリビングにいた私はすぐにドアを開けて確認する。
「どこ行くの?」
お兄ちゃんは靴を履いて出掛けるところだった。
「コンビニ」
「え、私も行きたい」
「じゃあ、上着持ってこいよ」
「わかった。待っててね。絶対に先に行かないでよ!」
「バカ。大声出したら母さんたちが起きるだろ」
私は急いでパーカーを羽織って、お兄ちゃんと家を出た。
空には無数の星が浮かんでいる。なんだかこうしてお兄ちゃんとゆっくりとした時間を過ごすのは久しぶりな気がした。
「パーティー大成功だったね。お父さんもお母さんも本当に喜んでた」
「そうだな」
こんな風に家族で誕生日パーティーができるなんて、両親が再婚した頃は想像もできなかった。
最初の頃は新しい環境を受け入れることができなくてずっと泣いていた。
……あれから10年、か。
月日にすれば長いけれど、体感的にはあっという間だった。
出逢った頃からお兄ちゃんは私より大きかったけれど、今では見上げなければ目が合わないほどの身長差がついた。
広い肩幅と、頼れる背中。艶っぽい首筋に似合わない喉仏に、血管がほんのりと浮いている手は大きくて骨っぽい。
同じ家に住んで、同じものを食べて、毎日顔を見てきたはずなのに、私が気づかないうちにお兄ちゃんはどんどん大人になっていく。