ごめん。ぜんぶ、恋だった。



「大切にできない理由、知りたい?」

ドクン、ドクンと心臓がうるさい。


「俺がお前のこと――」

お兄ちゃんの唇が動くのと同時に、ブーンと無神経なバイクが通りすがる。


「え、な、なに?」

上手く聞こえずに聞き返すと、お兄ちゃんは「ふっ」と笑った。


「なんでもねーよ」

お兄ちゃんはそう言って、再び歩きだす。「ほら、置いていくぞ」と、なんでもないような顔をして、私のことを手招きしていた。


コンビニに向かって足は動き出したのに、心臓の音が鳴りやまない。


〝俺がお前のこと――〟

簡単だった口の動きで声は届かなくても、わかってしまった。



〝好きだからだよ〟


なんで、なんでそんなこと言うの?

私は泣きそうになる気持ちを、必死で隠すことしかできなかった。

< 78 / 139 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop