ごめん。ぜんぶ、恋だった。
「大切にできない理由、知りたい?」
ドクン、ドクンと心臓がうるさい。
「俺がお前のこと――」
お兄ちゃんの唇が動くのと同時に、ブーンと無神経なバイクが通りすがる。
「え、な、なに?」
上手く聞こえずに聞き返すと、お兄ちゃんは「ふっ」と笑った。
「なんでもねーよ」
お兄ちゃんはそう言って、再び歩きだす。「ほら、置いていくぞ」と、なんでもないような顔をして、私のことを手招きしていた。
コンビニに向かって足は動き出したのに、心臓の音が鳴りやまない。
〝俺がお前のこと――〟
簡単だった口の動きで声は届かなくても、わかってしまった。
〝好きだからだよ〟
なんで、なんでそんなこと言うの?
私は泣きそうになる気持ちを、必死で隠すことしかできなかった。