ごめん。ぜんぶ、恋だった。


それから午前授業が終わり、五限目は教室移動だった。

提出し忘れていたプリントを職員室に持っていったあとだったので、友達は先に理科室へと行っていた。


……バサッ。

廊下を早歩きで進んでいると、抱えていた教科書を落としてしまった。


「ああ、もう……!」

独り言を言いながらしゃがみ込むと、私よりも先に拾ってくれた人がいた。


「なにやってんだよ」

「お、お兄ちゃん」

お兄ちゃんはひとりだった。  

もうすぐチャイムが鳴るというのに急ぐ様子もないので、授業をサボろうとしてるのかもしれない。


家にいるお兄ちゃんと、学校にいるお兄ちゃんの雰囲気は少しだけ違う。

家では楽なスウェットを着て髪の毛がボサボサになっていても気にしてないけど、学校ではなんだかシュッとしている。

つねに女の子から見られてるせいかな。

それとも制服のネクタイのせい?


「それ、どうしたんだよ」

お兄ちゃんの視線が突き指をしている私の右手へと向いた。

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