ごめん。ぜんぶ、恋だった。
5 ざらざら微睡む
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なんで一番欲しいものがひどく壊れやすい場所にあるんだろう。
それでも俺は、お前のことが欲しかった。
学校終わりの放課後。俺はとてもいい匂いがする部屋で、手触りのいいマシュマロクッションを背に座っていた。
「やばい、嫌われたかもしんない」
ずっと仁菜に突き飛ばされた胸が痛い。
自分では制御してるつもりだったけれど、さすがにスカーフに手をかけたのはまずかったんじゃないかと思っている。
「女の子は男が思うよりずっと敏感ですから。ね、ララ?」
俺に向けてシャーっと威嚇してるララのことを志乃は意図も簡単に抱きあげていた。
「いや、ララのことじゃねーし」
「わかってるよ。仁菜子ちゃんのことでしょ」
志乃は落ち込んでいる俺に目ざとく気づいて、家に呼んでくれた。
志乃の部屋に来るのは久しぶりだ。中学の時には晩ごはん目当てで毎日入り浸っていたけれど、色んな女と知り合ううちに遊びにいく回数は減った。
「柊が久しぶりに来たから、お母さん張り切って料理作ってるよ。食べていくでしょ」
「うん」
「じゃあ、私が柊ママに連絡しとくね」
志乃は母さんの連絡先まで知っている。いつか親父ともメッセージのやり取りをはじめていそうだ。