ごめん。ぜんぶ、恋だった。
「お前さ、なんでそんなに普通なの?」
「んーなにが?」
「だって引くじゃん。妹に気があるとか」
――『柊、私ずっとずっと知ってるよ。柊が仁菜子ちゃんのこと女の子として好きなこと』
あのあと、なにごともなかったかのようにリビングに下りてハンバーグを食べたけど、正直なんの味もしなかった。
それぐらい動揺していた。
大袈裟に言うなら、全部が終わったと思った。
まあ、べつになんにも始まってすらなかったけれど。それでも、誰かにバレるなんて想定してなかったから。
「だって私、柊が仁菜子ちゃんを好きになる前から気づいてたし」
「は?」
志乃はララの頭を撫でながら、ぽつりぽつりと仁菜がうちにやってきた小学三年生の頃の話をはじめた。
「柊って昔から冷めてたじゃん。他の子はみんなじゃれあって遊んでんのに、柊くんカッコいいって話しかけられても、いつもうざいって顔してた。本当に可愛げがないっていうか、顔だけはいいのにもったいないなって感じだったよね」
「悪かったな」
うまく言えないけど、俺はわりと早い時から男と女の違いを知っていた。
だから男女がごちゃ混ぜで遊んでいたり、ふざけてるのを見ると、妙に気持ち悪さが先立っていたことは覚えている。