ごめん。ぜんぶ、恋だった。
いつもと変わらない騒がしい教室。学校に着いた途端に、倉木が一枚の手紙を持っていた。
「なあ、これ渡してくれって頼まれた」
柊先輩へと書かれている手紙には、ハートのシールで封がされている。
「いらねえ」
俺は覇気のない返事をして、窓の外に目を向けた。
「お前ってなんでそんなんなのにモテんの?」
「さあ」
「こういうのが面倒ならさっさと境井とくっつけばいいのに」
「だからなんで志乃なんだよ。そもそも志乃にだって選ぶ権利はあるだろ」
「……いや、それマジで言ってんの?」
「は?」
理由もわからず倉木に呆れた顔をされている。ますます不機嫌になっていると、中庭では一年生がベンチに座って集まっていた。
そこに仁菜と速水の姿もある。当たり前のようにふたりは肩を並べて喋っていた。
俺のことは避けてるくせに、速水と一緒にいる仁菜は楽しそうに笑っている。
思えばあれが本来の仁菜の顔なのだ。
あいつはいつでも明るくて、喧嘩をしたって尾を引かない。だからこんな風に長く話していないのは初めてかもしれない。
……けっこう堪える。
ラブレターにはなんの関心もないっていうのに、仁菜のことを考えない時間はない。