ごめん。ぜんぶ、恋だった。


「なんで俺のこと避けてんの?」

テレビがついていないリビングでは、やけに自分の声が大きく聞こえた。


「べつに避けてないし」

「委員会があるからって嘘までついて、そんなに一緒に学校に行くのさえ嫌だ?」

自分が悪いっていうのに、仁菜に理由を言わせようとしてるなんて最低すぎる。


「……私は、お兄ちゃんがなにを考えてるかわかんない」

仁菜はスマホから視線を外した。相変わらず俺の目を見ようとはしないけれど、どことなく顔が赤いような気がして心配になった。


「お前、熱あんの?」

「な、ないから」

おでこに触れようとすると、仁菜は拒むように手で顔を隠した。


「ちょっと計ってやるから、じっとしろって」

仁菜は風邪をこじらせると長引く。小学生の時もそれで入院したこともあった。

熱を確かめるように仁菜の手首を掴むと、指先からドクンドクンという速い脈を感じた。

顔だけじゃなくて、手までもが熱い。


「……離して」

仁菜はますます顔を赤くさせて、そっぽを向いた。


その表情を見て、俺の中で淡い期待が生まれる。

これは勘違いかもしれないし、自惚れかもしれない。でも気持ち悪いって思われてもいいから、聞かずにはいられない。
 

「お前、俺のこと意識してる?」

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