ごめん。ぜんぶ、恋だった。
てっきり嫌われたから避けられているんだと思っていた。でも俺のことが嫌いなら、こんなに顔を赤くする理由ない。
鼓動だって、こんなに速くなんてならない。
なんで、いつからそうなった?
思い当たることなんて、ひとつもなかった。
「わ、私がお兄ちゃんのことなんて意識するわけないでしょ!」
仁菜は俺の手を振り払って、ソファから腰をあげた。ムキになればなるほど、そうなんじゃないかって思ってしまう。
この想いは絶対に届くはずなんてないと思っていた。
けれど、もしかしたら……俺たちは同じ気持ちになれる?
そしたら、なにもかも捨ててやる。
もし、そうなれたなら……。
ドクン、ドクン。
次に心臓が速くなっているのは俺のほうだった。
「仁菜、俺、お前のこと……」
「私は速水くんと付き合ってるんだから、勘違いしないでっ!!」
俺の言葉を遮るように叫んだ。
……今、なんて言った?
速水と付き合ってるって言った?
思考が整理できないまま、バタバタと二階に上がっていく仁菜の足音だけが響いていた。