ごめん。ぜんぶ、恋だった。
本当は誰と笑っていても、幸せでいてほしいと願いたい。
どんどん綺麗になって、溺れるくらい誰かを想ったとしても、頼れる存在でありたい。
でも俺はまだそこまで広い気持ちにはなれないから、誰かを好きになって、遠く離れても、仁菜の心の片隅にはいたいと思ってしまう。
「事情はわかんねーけど、ゆっくりしてけよ」
散らかっている部屋には、グラビア雑誌が無造作に置かれていた。
ここは隣街にある倉木の家だ。なんとなくフラフラと家を出て「今から行っていい?」と連絡すると、倉木はすんなりと受け入れてくれた。
「……親は?」
「ああ、母ちゃんは夜勤で、父ちゃんは名古屋に出張中」
「そっか」
こういう時、声を荒らげたり、物に当たったりすれば少しはスッキリするんだろうけど、あいにく俺はそんな方法は知らない。
「つか俺、カップラーメン食べていい?お前も食う?」
「いや、いい」
母さんが用意してくれた晩ごはんには手をつけずに出てきてしまった。電車に乗ってここまで来たはずなのに記憶が飛んでる。