ごめん。ぜんぶ、恋だった。


「倉木って、めちゃくちゃ失恋してんのによく立ち直れるよな」

フラれてもいつも昼飯はがっつり食ったりしてるし、すぐにまた気になる人ができたりする。その切り替えの早さが、今は羨ましい。


「そういう失恋を橋本は女の子たちに味わわせてんだよ」

「誰も俺のことなんて本気じゃねーよ」

「なんで言い切れるんだよ。自分以外の人の気持ちなんて誰にもわかんないだろ」


……たしかにそうだ。

だから、仁菜は俺のことが全然わからないと言った。自分の中ではこんなにもはっきりしてるのに、相手には伝わらない。


「まあ、面倒くさそうだから深くは聞かないけど、今日は泊まっていけよ。帰りたくないなら、いたいだけうちにいていいし」

「……サンキュ」


その晩、倉木の部屋で眠りにつくと懐かしい夢を見た。それは記憶の大半を占めている幼い頃の俺たちのことだ。

あの頃は手を繋ぐことも、名前を呼び合うことも、一緒に並んで歩くことも簡単だったのに、いつからこんなに難しくなってしまったんだろうか。


できることなら、出逢った頃に戻りたい。

ふたりで吹いたタンポポの綿毛みたいに……。

こんなに想いが増えないうちに、遠くに飛ばしてしまえばよかったんだ。

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