~君が教えてくれるなら~
__古瀬朝陽side__
『…っそ、そんなに言うんだったらさ、私のこと夢中にさせてみてよっ!!』
まさかそんなことを言われるとは思ってもなかった。
ただ彼女の横顔がすこし寂しそうでふっと浮かんだ言葉だった。
__何かに夢中になったことないだろって。
その時の少しムッとした彼女の顔が何だか可愛くてちょっといじめてみたくなった。
そしたらまさかの返しに思わず吹き出してしまったけど。
別に俺の領域に踏み込んでも嫌じゃないと思った。
だから『いいよ。』って答えた。
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「おい~朝陽~きなっちゃんとはどこで仲良くなったわけぇ?」
一緒にバンドを組んでる俺の友だちの響(ひびき)とイッチーと織田(おだ)が俺を取り囲み質問攻めの嵐…。
「そんなんどこでもいいだろー」
「いーや!よくない!俺らなんも知らなかったー!」
「なんでいちいち言わなきゃいけないんだよ。」
「水くさいぞ!朝陽!俺らの仲だろ~!」
あーーこいつらほんっとに。
「めんどくせぇ…」
そう言って俺はベースを弾く。
低い音が体に響いて心地いい。
俺は心から音楽が好きだ。
ベースが大好きだ。
こんなに夢中になれるものに出会った。
うるさいけどこんな仲間にも。
だから少し寂しそうに話す彼女に
教えてあげたかったんだ。
こんなに熱い気持ちになれるものが
この世界にはたっくさんあるんだって。
「逃げんなー朝陽ー!」
「あーハイハイ。わかったわかった。」
「何だー!やっと白状する気になったか~」
「きなっちとどういう関係!?」
「んー。………秘密。」
やっぱコイツらには教えたくない。