~君が教えてくれるなら~
見回りが終わってすぐ休憩に入っていいよと言われた私はさっき美琴が撮ってくれた写真をピラピラ振りながら教室の床に寝っ転がる。
写真、早く見えないかな~…
そんなことを考えながらちょっとうとうとしてきた所に
「あ!生成ここにいたの!?」とゆりぞーが暗幕をめくり入ってきた。
「ん?どした?」
「これからミスターコンに遠山先輩が出るんだって!見に行こ!!美琴とまりりんは先に行ってるから!」
「え!ここはどうするの?!」
「そんなん男子たちに任せればいいから!早く!」
そういってなかば強引に私を起き上がらせ急かすゆりぞー。
渋々校庭までついていくとメインステージの前はすでに大勢の女子達で溢れ返っている。
「えー!これみんな遠山先輩目当ての子達なの!?」
「そうに決まってるでしょ~!」
そういって人混みを掻き分け前の方に進むゆりぞーの服を掴みなんとかついていく。
「あ!きたきた!おそーい!!」
かなり前の方までくると美琴とまりりんに合流することができた。
「2人ともガチ勢過ぎない!?」
私の言葉にカメラを構えスタンバイしていたまりりんが「当たり前だよ!生成!場所取りからすでに戦いは始まってるんだよ!!?」と目をカッと開き私に言った。
「は、はい…すみません。」
こ、怖い…。
いつも穏やかなまりりんがこんなになるなんて。遠山先輩の威力って何か凄い…。
『お次は2年3組代表!昨年のミスターコン優勝者の遠山 駿(しゅん)さんでーーす!』
司会の紹介により遠山先輩が登場する前からすでに黄色い悲鳴が聞こえる。
もちろん私の両サイドからも…。
そしてメインステージの上座から遠山先輩が登場しニコッと笑顔を向けると「キャーーーー!!!♡♡♡」と歓声があがる。
もうこれ一般人ってレベル越えてる気が…
遠山先輩がステージにあがると前へ前へ押し寄せてくる女の子たち。
「うぅ~苦しいぃ」
押し潰される感覚に耐えられなくなり私は何とか人混みを潜り抜けメインステージから離れる。
「遠山先輩…恐るべし…。」
まりりんたちには申し訳ないけど遠山先輩興味ないんだもんっ!!
あんな人混み耐えられないよ~…
1人でプラプラと屋台の前を歩いていると食の誘惑には勝てず、適当に色々買って食べることにした。
ベンチに座って食べているとふとポッケに入れた写真のことを思い出す。
そういえばそろそろ浮き出てるはず…。
そう思い見てみると真っ白だったフィルムには私と朝陽くんのツーショットが写し出されていた。
「やっぱうちの顔悲惨だ~…」
朝陽くんに写真が渡らなくて心底良かったと思う。
写真の中の朝陽くんは首に手を当ててそっぽを向いてた。
朝陽くんってよくこのポーズするな~…。
見回りの時だって…。
そんなことを考えていると「あ!きなっち~!」とイッチーと織田くんが私を見つけ駆け寄ってきた。
「あ、イッチーと織田くん!」
「1人でなにしてたーん?」
「いや~…ミスターコン見に行ってたんだけどさぁ、女の子たちの熱気に圧倒されて逃げてきたの(笑)」
「あーあの遠山とかいうヤツがでるからな」
織田くんが気に食わなそうな顔でいい放つ。
ただの僻みにしか見えない…。と思ってることは言わないでおこう。
「てか、きなっちその写真なーに?」
「あ、これは朝陽くんと撮ったやつなんだけど私の顔が酷いからちょっと見せられないって…あーーー!!!」
私の言葉を無視してチェキの写真を見ていたイッチーと織田くん。
「ちょちょちょ!やめて!!返してーー!!」
「え~何で!いいじゃん!きなっちビビってて可愛いよ~♪」
「やめて~…恥ずかしい。」
「っていうか朝陽もめっちゃ照れてるじゃん~!ウケるwww」
「えっ?」
朝陽くんの顔を指差して笑うイッチーに思わず聞き返してしまう。
「この首に手を置く仕草してるときの朝陽って大概照れ隠ししてるよな」
「え、そうなの!?」
「うん♪きなっちに腕掴まれて照れちゃったのかな朝陽~♪かっわいい~!よしおだっち!冷やかしにいくぞ!」
そう言って1人で盛り上がっているイッチーと
「朝陽のやつ…女子と抜け駆けなんて許さんっ!」とメラメラしている織田くんは行ってしまった。
というか。あの2人の言ってることが本当だとしたら、
見回りの時だって。この写真の時だって。
朝陽くんは不機嫌でも嫌がっているわけでもなく、照れてたってこと?
ドキドキしてたのは私だけじゃないのかな。
こんなのちょっと期待しちゃうよ。朝陽くん…。