~君が教えてくれるなら~
演奏が終わり朝陽くんたちがステージを降りていく。
「皆かっこよかったね~って!ちょっと、生成どこいくのー!」
私はいてもたってもいられなくなり気づいたら走り出していた。
今まで目の前にいた朝陽くんに会いたくて。
ステージの裏に行くと楽器を片付けている朝陽くんの姿があった。
「朝陽くんっ…!!」
私の声に反応した朝陽くんはくるっと振り向き嬉しそうな顔で手を振ってくる。
「朝陽くんっ!あのねっ…演奏めちゃくちゃかっこよかった!あと歌も!!すごく、ほんとにすごかった!」
「ハハッ、ありがとう!羽柴のこと見えてたよ」
「ほんと?」
「うん、ずっと俺の方見てんなぁって思ってた(笑)」
「えっ…そんなことは…。」
そんなことは…ある…。
「あの歌うたってるときにさ、羽柴と会った時のこと思い出してた。」
「えっ…?」
朝陽くんが私の目を真っ直ぐ見つめてそう言ってくるから…。
「私も思い出してたよ。」
素直にならざる終えなかった。
「一緒じゃん!」
嬉しい。大勢の人たちが聴きに来てた中で朝陽くんは私との出来事を思い出していたなんて。
2人しか知らない2人の秘密。
「…朝陽くん、あの日夢中にさせてあげるって言ったの覚えてる?」
「うん。」
「私ね、夢中になるってこと少し分かった気がする」
「ほんと?じゃあ俺、有言実行したじゃん!」
子供みたいな顔で笑う朝陽くん。
朝陽くんが好きなんだって認めたからなのか。
その笑顔だけですごくドキドキしちゃう。
「確かに!有言実行(笑)」
顔を見合わせて何だか面白くて2人で笑い合った。
朝陽くんが教えてくれたこの気持ち。
これからどんなふうに色づいていくのか、
今はまだ分からないけど。
それでもこれだけは胸を張って言える。
私は朝陽くんが好きなんだって。