~君が教えてくれるなら~
カラオケにつくとすでに着いていたクラスメイトたちが歌を歌いながら盛り上がっていた。
まりりんはすっかり元気になり?というか開き直ったのか、誰よりも盛り上がって楽しんでいた。
どのくらい時間が経ったのか…私たちは相変わらずの盛り上がりで騒いでいでる。
「遠山先輩の気になる人がなんぼのもんじゃーい!!!」
「「「そーだそーだ!!!!」」」
「てことで西野真梨奈いっちょ失恋ソング歌いまーす✋🏻」
「おい!やめとけまりりーん!!!!また病むぞー!!」
美琴はまりりんを追いかけマイクを奪おうとする。
「ちょっと私トイレ行ってくる!」
「ほいよー!」
近くにいたゆりぞーにそう伝え私は部屋を出た。
トイレから出て部屋へ戻る途中ベランダのようなスペースが目に止まった。
そこまでいきベランダまで出てみると夏の夜特有の生ぬるい風が私を撫でた。
「んーー!」
グゥーーと伸びをしてベランダの手すりに体を預ける。
文化祭、色んなことがあったなぁ。
目を閉じて今日までの出来事を思い返す。
どの思い出にも…気づけば朝陽くんがいる。
朝陽くんと出会ってから、私の世界には鮮やかな色がついたみたい。
朝陽くん…。
「どう思ってるのかな。」
私のこと、少しは気になってくれてるのかな。
でも今日あの子の告白を断った時、夢中になってるものがあるって言ってた。今はそれに集中したいからって。
あの言い方的に音楽のことなのかなぁ。
それとも別のもの?それか…別の人……
ダメダメダメ!!!生成!!
何を弱気になっとるんだ!!
分からないことをモヤモヤ考えてても仕方ない!!!
ペチンッと両手で顔を叩き気合いを入れる。
「よしっ!!!」
「…何してんだ?」
「え?」
声のする方を向くと
「えっ!!!?朝陽くん!?」
不思議そうに私を見ている朝陽くんがいた。
「えっ何でここに?」
朝陽くんは驚きに戸惑っている私の隣までくるとベランダの手すりに頬杖をつく。
「俺らも打ち上げカラオケだったんだよ!てか羽柴こそこんなとこで何してたの?」
「へっ、あーなんかいい感じの所だったからちょっと休憩してたの!」
「そっか。てか普通に羽柴いてビビった笑」
ニッと笑う朝陽くんの笑顔に胸が締め付けられる。
その笑顔は反則級です………
「いやいや!私の方こそビビったから!笑」
「いや俺もさ、風にあたりたいなぁ〜て思ってここに来てみたら羽柴が1人でなんかやってるからさwww」
ヤバい、、!変なとこ見られてしまった!!!
朝陽くんにやべーヤツ認定されちゃったらどうしよう😭
「あ、あれは、気合いをいれてたの!」
「気合い?なんの?」
「え、それは……」
何と言おうか少し考え込む私。
夏の風が朝陽くんの髪をなびかせる。
そんなことは気にも止めていない様子の朝陽くんは私の言葉を待っている。
あの時、初めて屋上で会った時にみたいな風。
でもあの時とは少し違う。
2人を吹き抜けていく風も
季節も
そして私たちも………
「……秘密!!」
ニコッと笑って私はそう答えた。
「おい!溜めといて秘密かよ〜」
「朝陽くんのマネだよ〜!」
私たちは顔を見合わせて笑った。
少しづつお互いの事を知っていく。
きっと今の私はあの頃より朝陽くんのことを知っている。
そしてあの頃より朝陽くんが好きだ。
芽生えた好きを大切にしたい。
朝陽くんの隣で笑っていたい。
今はもう少しこのままで……。