ティアドロップ(短編)
「聞いてくださいよー、この娘また変なの引き当てちゃって。

初めてなのに、できなかったからって『女としてあり得ない』とか」


「美月、言わないでっ」


どんくさい私が止めた頃には既に遅かった。


「あー……そういうこと」と、片方の眉をくいっと上げて西園寺さんが呆れた顔をしてる。


「西園寺さんの前途を祝した席なのに、暗い話題ですみません」


「百田は落ち込んでも変な奴だな…。で、ビンタでもして別れてきたのか」


「まさかそんな、私のせいなのに」


「ほらそういう所!だからあんたは駄目男のカモになるのよっ。もうイライラするーー!!」


美月がまたしても頭をかきむしる。そう言われても私は美月のような美人で気が利く女の子じゃない。

美月はひとしきり怒ると「髪が乱れたのは時乃のせい!」と化粧ポーチを掴んでトイレに行った。


「そいつのことまだ引きずってるのか?」


「本の話聞くの楽しかったし…優しかったんで」


「優しい奴が言うセリフかよ、ばーか」


西園寺さんにまで怒られてしまった。泣きっ面に蜂とはこの事だ。お酒が回ってだんだんと自暴自棄になり、グラスを深く傾ける。


「いっそのこと、西園寺さんが全部教えてくれたらいいのに」


「お前なぁ……何言ってるかわかってんのか?」


西園寺さんは間違っても私みたいなのには手を出さないから、口先だけなら何とでも言える。彼が連れて歩く女の子は美月のような美人だけだ。


「分かってますよ、私じゃ釣り合いませんね」



< 7 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop