ご利益チョコレート
4
「休まんで大丈夫なんか?」
「伊吹がちゃんとフラれて来いって言うたんやんか」
たかが5段、されど5段。
わたしの足首は倍ほどに腫れ上がり、どんな落ち方をしたのかこめかみからは流血。
泡食った伊吹に救急病院に運び込まれた。
右足首靭帯損傷。
ギプス装着、松葉杖。
不幸中の幸いはこめかみの傷が絆創膏で済んだことか。
「夜中2時までお前の病院に付き合って、今朝は早うからまた車で会社まで送るとか、オレ可哀想……」
「煩いな、体力底なしゴリラのクセに」
「それにしたって出社早すぎやろ。いつもより1時間早い」
「こんな姿、たくさんの人に晒したない」
早朝のビジネス街、ちらほらと歩く人はいるけれど、いつもの出勤時間に比べると全然少ない。
伊吹が会社の前に車をつけた。
「伊吹、降りられへん」
「わかってる、ちょっと待ち」
伊吹のSUV車はその身体に見合ってデカい。
車高もあるので、怪我をしたチビのわたしには乗り降りが大変だ。
伊吹が運転席から降りて、車の前を通り、助手席のわたしの方へと回る。
坊主頭に黒いジャージの上下にサングラス、どこかの組の下っ端のようだ。まさかお坊さんだとは誰も思わないだろう。