ご利益チョコレート
ようやく仕事を終えて、バッグを抱えてオフィスを出る。エレベーターに向かう途中、会議室の前を通ったとき、急に扉が開き、腕を掴まれ部屋に引き摺り込まれた。
「西林さん」
優しげな色を声に含ませながら、瞳はちっとも笑っていない部長がいた。
全身に怖気が駆け抜ける。
頭の中でアラームが鳴る。
「ぶ……部長……打ち上げ、始まりますよ?早く行かないと……」
「いいよ、あんなの。打ち上げなら君とするから」
掴まれた手に力が入り、粘りつくような視線が身体にまとわりつく。
「西林さんは何が食べたい?フレンチ?イタリアン?」
「いえ、あの……」
「僕のこと、ずっと誘ってただろう?胸を強調するような服を着て、媚を売るように話して」
神様に誓ってそんなことしてない!
むしろこの胸のせいでいい思いなんてしたことないからニットとか身体にぴったりする服は着ないようにしているのに。
背中に冷たい汗が流れた。