ご利益チョコレート
「国島が?」
チラリと多田さんが電話中の国島さんに目をやり、ふーんと気のない返事をして僅かに眉を顰めた。
正直に申告した方が波風がたたないかと思ったけれど、気を悪くしたのかもしれない。
「ま、いっか。じゃ、わたしはお先に。詩史ちゃん、気を付けてね」
ヒラヒラと手を振りながらオフィスを出て行く背中を見送る。
みんなが次々にお先に〜と帰って行き、とうとう二人っきりになって不安になってきた。
本当に待っていても良いのだろうか?
ド厚かましいヤツだと思われないのかな?
「待たせた。西林、行くぞ」
「あ、は、はい!」
何も言わず、スっとわたしのトートバッグを取り上げようとするのを思わず止めた。
やっぱりあかん。
恋人たちの行事を邪魔したらあかん。
「西林?」
ちょうど誰もいないオフィス。
さっさとチョコレートを渡して、フラれて、一人で帰ろう。