ご利益チョコレート
バッグからチョコレートの包みを取り出す。
「あ、あの、国島さん!これ、チョコレート」
チョコレートを国島さんに差し出した。
「えっと……好きでした。良かったらこれ、食べてください」
決死の告白。
幸せに繋がらない告白。
恋心に区切りをつけるためだけの。
沈黙がいたたまれなくて、国島さんの顔を見ると醒めた目でチョコレートとわたしを見下ろしていた。
「……一応、いただいとくわ。ありがとう」
一応……。
そうだ、多田さんがいるもんね。
「あの、やっぱり一人で帰れ……」
「送るって言うたやろ」
再びトートバッグを取り上げられて、松葉杖を渡される。
ここで泣いたらあかん。
分かりきっていた答えに傷付くなんて間違ってる。
エレベーターに乗り、会社のエントランスに降りて外に出た。
「ここでちょっと待ってろ」
朝、伊吹に車を降ろされた所あたりで国島さんに言われた。