ご利益チョコレート
5
15分ほど車を走らせただろうか。
車が見知らぬマンションの地下駐車場に入った。
わたしの頭の中は疑問符でいっぱいだ。
「く、国島さん、ここどこですか?」
「オレの家」
後部座席に置いてあるわたしのバッグと自分のバッグを掴むために運転席と助手席の間から体を捩り手を伸ばした国島さんと距離が近付き、心臓がドキンと跳ね上がる。
そうか、ここから公共交通機関を使って帰れということか。そういえばさっきバス停が見えたし、京都を東西に走る大きな通りだからタクシーもすぐつかまるだろう。会社からタクシーで帰るよりは料金も安いかもしれない。
助手席側のドアが外から開けられたので、松葉杖をついて外に出た。
「あ、あのありがとうございました。ここからタクシーで……」
「帰すわけないわな、送るって言うてんのに」
バッグは相変わらず返して貰えず、また腰に手を回されてエレベーターへと連れて行かれる。
センサーに鍵のようなものを翳すとウィンと起動音がしてエレベーターが下りてきた。