ご利益チョコレート
「わたしが勝手に!勝手に国島さんが好きなだけなんです!今日チョコレート渡して諦めるつもりで!家までのこのこついてきて、す、すぐ帰るのでーーーー」
謝りながら涙腺が、決壊した。
こんなこと、望んだ訳じゃない。
国島さんが好きで、好きで、でも誰かを不幸にしてまで奪うつもりなんてなくて。
この場から立ち去らないと、と思うのに立ち上がれない。
「…………詩史ちゃん」
「ーーーーはい!」
「あげるわよ、こんなので良かったら」
ブンブンと頭を横に振ると、涙の粒が空中に舞う。
「もうええから、西林」
国島さんに脇の下に腕を入れられて立たされて、またソファーに戻された。
「……詩史ちゃん、無理矢理連れ込まれたんじゃないの?」
無理矢理やけど……
「で、でもついて来たのはわたしで……」
はーっと多田さんが深い溜息をつく。
「怪我して身体が自由にならない詩史ちゃんをこのバカが何かしてるんじゃないかと心配で来たんだけど」
「要らん世話や!帰れ!」
多田さんがハンカチでわたしの顔を拭ってくれる。
「なんか話が噛み合ってないような気がするけど、合意があるみたいだしいいか」