ご利益チョコレート


怯えさせないように、触れるのもほんの少し、話すときも適度な距離をおいて、大事に大事に扱ってきて、西林の視線に、仕草に、オレへの好意を感じることが多くなってーーーー。


バレンタイン前日、残業後、泣いた後のように赤い目をした西林に気付く。


コンタクトにゴミが入ったなんて下手な言い訳をして。


明日、可能性は0に近いなんて強がって笑う。


誰のことを言ってる?


お前はオレが好きなんとちがうのか?


呼び止めようとしたオレの横をすり抜けて帰って行ってしまった。


逃がさへん。


絶対に。


翌日、そんな決意を胸に、帰りに西林を取り込むために車で出勤したオレを嘲笑うように、目の前で車からデカい男に抱き降ろされる西林。

しかも親密そうに。


オレの、出した本人も驚くほど冷たく低い声に、怯えながら振り向く西林。



それが可能性0の男?



よく1日冷静に仕事ができたもんだ。
オレの理性を褒めてやりたい。
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