ご利益チョコレート
「食べよう」
そうだ、こんな役に立たないもの、お腹におさめてさっさと処分してしまおう。
ラッピングをはずそうとしたわたしの手の中からチョコレートが取り上げられた。
「張りこんだな、祇園に新しくできた店のやろ」
「本気やったもん」
「まだ過去形にすんなや」
「なに」
「立ち聞きなんかやなくてちゃんと面と向かってフラれてこい」
「どして」
「オレと親父が毎日経をあげてたんやぞ、ご利益いっぱいや。フラれるにしたって何かええことあるかもしらん」
フラれるフラれると煩いな。
「キチンとカタつけてこい。そしたら友達紹介したる」
「……いらん。ゴリラの友達はゴリラやん」
「ちゃんと気のええゴリラを紹介したる」
ゴリラはゴリラなんやな。
ふうっと息を吐く。
手を緩く引かれて立たされ、もう遅いから寝ろと本堂を出るように促された。
伊吹の言う通りかもしれない。
ちゃんと自分の気持ちに区切りをつけるためにも、明日、チョコレートを国島さんに渡そう。