窓縁と悪魔



さて どうしたものか…


雨もしのがなければならないし 今私が考えうる1番安全なところといえばーー


目の前にあるこの塔より他はない


この塔は廃墟と言われているのだから人は住んでないはずだ


…と私は思うことにした だってすごく古い建物だから…


そうして私は塔の入口を探して歩きはじめた


「おや、珍しい」



上の方から声が聞こえてきた 男の声だ


私はとっさに声がする方を向いた 塔の2階部分の窓縁から 男がこちらを覗いていた


瞳は深い海のような青い瞳 それとは対照的な血塗られたように鮮やかな紅色 優しそうにたれためじりは いかにも物腰柔らかそうで


誰もが見とれてしまうような美しい男だった


実際に私も10秒あまり見とれていた


私はしばらくのちにハッとして


違う 今は見とれている場合じゃない!


「貴方は誰?どうしてこの塔にいるの?」


「そんなことを言われても困るなぁ…ここは僕の“家”だからかなあ…」


見た目どおり優しそうなゆるゆるとしたしゃべり方だ


「ここはずっとずっと前から廃墟のはずよ!」


「それは…ここ最近誰もここの塔に来ないから勝手に勘違いしてるんじゃないかなぁ」


「…ここには誰も来ないの?」


「そうだよ、僕1人だけ。ここ何十年 僕以外の者を見たことがないんだ」


そう言いながら男は空を見上げた 雨が降っている。









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