±10の恋
プロローグ
**
「貴方のせいでしょ!?もっと働いてちょうだいよ!!!」
「俺だって頑張ってんだよ!お前の教えが悪いんだろ!?」
あぁ、また始まった。
部活が終わって家へ帰ると、リビングから両親の悲鳴が聞こえる。
毎日毎日、ずっと言い合ってて。正直うんざりする。
けれど、全部私のせいだから…
進学塾や私立の進学校、家庭教師、ピアノ、ダンス、とにかく色んな事を習わせてもらっている。
それなのに、私は何一つ才能を発揮していない。
だってやる気がないもの。
その私のやる気のなさにも気付かないバカな両親。
特に、勉強においては母が、芸事においては父がうるさかったのが辛かった。
母はピアノなんかする暇があったら勉強しなさいって言うけど、
父は勉強しても良いことないんだから芸事を極めなさいって。
どっちかひとつならまだしも、両面から責められるからやめてほしい。
全部私のためだって言うけど、本音はただ自分がやれなかった事を子供にさせているだけ。
そんな事、分かってる。
「ただいま、」
消え入りそうな声でそっと呟くと、両親の言い合いは止まった。
「ほら、地味だろ。お前がもっと明るかったらこんな地味にはならなかったんだぞ!」
「何が地味よ!知らないわよそんなの!
それよりも、今日のテストはどうだったの」
うるさいな、地味じゃないっての。
こう見えても私、友達多いんですけど、
内心ブツブツ言いながらリュックから今日返却された二学期末テストの解答用紙を取り出した。
いつもは取り出したらすぐ部屋に戻るけど、今回は自信があった。きっと喜んでくれるはず。
5教科合計246点、9教科446点。学年では2位。
「学年1位は、やっぱり生徒会長だった。
でも、会長とは1点差だったの…!!」
父は「ぉ、」と少しだけ表情を緩ませた。
けれど、もう少し綺麗な字を書けよ と呟かれた。
「……何なのよ、これは」
「え、?」
しかし、関心の母から絶望に似た声があった。
「満点が2つしかないじゃない!しかも英語と国語?理数系はどうしたの。良い?貴方は医者になるのよ。」
母の長い説教を聞いている時、頭のどこかでプツン、と太い太い糸が切れる音がした。
あぁ、これ、もうダメだな。
そう思うと、視界がぐわんと揺れた。
「ちょっとりず!どこ行くの!?」
掴まれた手首を乱暴に振りほどき、玄関へと向かう。
「おいりず!」
止めにも来ようとせずただリビングから大きな声を出すだけの父。
癇癪を起こして物に当たる母。
もう、こんな家いてたまるものか。
迷わず私は家を飛び出した。
さっきまでは冷たくてどうしようもなかった風が、今では心地よい。
「…どこ、行こ」
行くあてもなく、取り敢えずコンビニに寄った。
電子マネーはあるし、現金も多分あったは…ず…。
唐突に不安になり、慌ててお財布を確認する。
あ、良かった。あった。
そういえば、昨日の帰り道、友人に結局奢ってもらったっけ。
スポーツゼリーを1つ買って、ちゅーちゅー吸いながら夜道を歩いた。
いくら都会とは言えど、怖いな。
変な妄想をしてしまって背筋が震える。
下を向いて早歩きで友人の家の方へと歩みを進めた。
____ドン
「いっ...す、すいませ__」
目を見開いた。
ぶつかった相手を見ると、あの超絶イケメンでかわいくて超絶人気を誇る下野春くんじゃん!!!
サングラスをしているけれど、身長差からサングラスの下の目元が見えて確信した。
「あっ、あの、大丈夫…?」
「ひいっ!」
ま、マジの本物…!?
「あ、あ、あああのっ、し、し、しもは、しもはる!?」
あ、あぁ、驚いた表情させも美しい...
「しっ、ちょ、ちょっとこっちおいで」
人目を気にしてか、私の手を引いて路地裏に入った。
しもはるに手を握られてる…ふふ、やばい、今日命日かもしれない。
**
「貴方のせいでしょ!?もっと働いてちょうだいよ!!!」
「俺だって頑張ってんだよ!お前の教えが悪いんだろ!?」
あぁ、また始まった。
部活が終わって家へ帰ると、リビングから両親の悲鳴が聞こえる。
毎日毎日、ずっと言い合ってて。正直うんざりする。
けれど、全部私のせいだから…
進学塾や私立の進学校、家庭教師、ピアノ、ダンス、とにかく色んな事を習わせてもらっている。
それなのに、私は何一つ才能を発揮していない。
だってやる気がないもの。
その私のやる気のなさにも気付かないバカな両親。
特に、勉強においては母が、芸事においては父がうるさかったのが辛かった。
母はピアノなんかする暇があったら勉強しなさいって言うけど、
父は勉強しても良いことないんだから芸事を極めなさいって。
どっちかひとつならまだしも、両面から責められるからやめてほしい。
全部私のためだって言うけど、本音はただ自分がやれなかった事を子供にさせているだけ。
そんな事、分かってる。
「ただいま、」
消え入りそうな声でそっと呟くと、両親の言い合いは止まった。
「ほら、地味だろ。お前がもっと明るかったらこんな地味にはならなかったんだぞ!」
「何が地味よ!知らないわよそんなの!
それよりも、今日のテストはどうだったの」
うるさいな、地味じゃないっての。
こう見えても私、友達多いんですけど、
内心ブツブツ言いながらリュックから今日返却された二学期末テストの解答用紙を取り出した。
いつもは取り出したらすぐ部屋に戻るけど、今回は自信があった。きっと喜んでくれるはず。
5教科合計246点、9教科446点。学年では2位。
「学年1位は、やっぱり生徒会長だった。
でも、会長とは1点差だったの…!!」
父は「ぉ、」と少しだけ表情を緩ませた。
けれど、もう少し綺麗な字を書けよ と呟かれた。
「……何なのよ、これは」
「え、?」
しかし、関心の母から絶望に似た声があった。
「満点が2つしかないじゃない!しかも英語と国語?理数系はどうしたの。良い?貴方は医者になるのよ。」
母の長い説教を聞いている時、頭のどこかでプツン、と太い太い糸が切れる音がした。
あぁ、これ、もうダメだな。
そう思うと、視界がぐわんと揺れた。
「ちょっとりず!どこ行くの!?」
掴まれた手首を乱暴に振りほどき、玄関へと向かう。
「おいりず!」
止めにも来ようとせずただリビングから大きな声を出すだけの父。
癇癪を起こして物に当たる母。
もう、こんな家いてたまるものか。
迷わず私は家を飛び出した。
さっきまでは冷たくてどうしようもなかった風が、今では心地よい。
「…どこ、行こ」
行くあてもなく、取り敢えずコンビニに寄った。
電子マネーはあるし、現金も多分あったは…ず…。
唐突に不安になり、慌ててお財布を確認する。
あ、良かった。あった。
そういえば、昨日の帰り道、友人に結局奢ってもらったっけ。
スポーツゼリーを1つ買って、ちゅーちゅー吸いながら夜道を歩いた。
いくら都会とは言えど、怖いな。
変な妄想をしてしまって背筋が震える。
下を向いて早歩きで友人の家の方へと歩みを進めた。
____ドン
「いっ...す、すいませ__」
目を見開いた。
ぶつかった相手を見ると、あの超絶イケメンでかわいくて超絶人気を誇る下野春くんじゃん!!!
サングラスをしているけれど、身長差からサングラスの下の目元が見えて確信した。
「あっ、あの、大丈夫…?」
「ひいっ!」
ま、マジの本物…!?
「あ、あ、あああのっ、し、し、しもは、しもはる!?」
あ、あぁ、驚いた表情させも美しい...
「しっ、ちょ、ちょっとこっちおいで」
人目を気にしてか、私の手を引いて路地裏に入った。
しもはるに手を握られてる…ふふ、やばい、今日命日かもしれない。